採用活動の際に求職者との接点になる求人票。求職者は、山ほどある求人票の中から自分に適するものを選ぶことになりますし、企業側は、多くの求職者の目につくようにしたり、入社後のギャップが生まれないようによく考える必要があります。今回は、そんな企業の採用活動の顔ともいえる求人票の効果的な書き方を解説します。
- 求職者に刺さる求人票の書き方を知りたい採用担当者
- 母集団形成を効果的に進めたい求人票の書き方を知りたい採用担当者
求人票とは?
求人票とは、求職者募集の際に、業務内容や契約期間、就業場所などの労働条件を記載する書類です。求職者は、これを見て応募するか否かの判断を行います。
記載しないといけない項目
記載する項目に関しては、厚生労働省によって必ず記載しなければならない項目があり、注意が必要ですので、下記に列挙します。
- 業務内容
- 契約期間
- 試用期間
- 就業場所
- 就業時間・休憩時間・休日・時間外労働
- 賃金
- 加入保険
- 募集絵やの氏名又は名称
- 雇用形態
記載してはいけない項目
逆に「雇用対策法」「男女雇用機会均等法」により、求人票に記載してはいけない内容もありますので、併せて注意が必要です。具体的には下記の項目です。
- 性別を限定する表現
- 年齢を限定する表現
- 差別表現
- 最低賃金を下回る給与
- 身体的健康(身長・体重・体型など)
- 外国人差別
求職者は求人票のどこを見るのか
一般的には、求職者は下記の項目を重視する傾向があると言われています。
- 勤務地
- 職種
- 年収
- 雇用形態
- 休日条件
しかし、昨今は売り手市場と言われており、確り企業の強みや求人良さの訴求を行わないと上手くいかないことが多かったりします。また、仮に同じ求人でも、想定するペルソナを置き、表現方法を変えることで母集団形成や入社後のフィットが上手くいくか失敗するかの明暗が分かれる変わることも結構多いです。このあたりについては、実際にできている企業は殆どない印象で、他の起業と差をつけられるポイントになりますので、本記事の後半で解説していこうと思います。
効果的な求人票の書き方
人材要件・求める人物像の設定
求人票作成にあたって、人材要件・求める人物像の設定を先立って行う必要があります。この流れやポイントについては下記の記事に記載しているので、参考にしてください。
本記事ではそこからどのようにして効果的な求人票を作成していくかを解説していきます。
自社の魅力の棚卸し
自社の魅力・強み・特色をまずは掴んでいくというステップになります。自分では自社の特色や強みをあまり意識することはなく、外から言われて気づかされるという経験をお持ちの方も多くいらっしゃると思います。これを行う背景として、近年入社後のミスマッチで離職してしまうケースが多くあったり、求職者視点で会社の社風やカルチャーをより重要視する傾向が増加しているからです。
具体的にどのように自社の魅力・強み・特色を表出ししていくかに関しては、まずは既存従業員への聞取りやアンケートを行うのが良いでしょう。
- 入社を決めたきっかけは?
- 普段働いていて、この会社で働いていて良いと感じる点は?
- 自社(・ご自分の所属部門)のカルチャーはどんなものと感じているか?
など、様々な質問を問いかけてみると良いでしょう。
また、社外からの意見を得られる場合は、それも盛り込むと良いでしょう。エージェント会社を活用している場合、エージェントの方は多くの会社を見てきている経験を持っているので、どんな点が特色・強みかを客観的にコメントしてもらうと非常に効果的です。他には、会社のOB・OGに聞いてみたり、仲の良い取引先などがあればどう感じているかを聞いてみても良いでしょう。
求人票の文面記述
最後に文面の形に仕上げていく上で、自社の求人の魅力を訴求していきます。こちらの記事の”求人票の作成”のパートでも軽く触れたように、同じ職種を応募する際でも、ペルソナをイメージ・意識して表現を変えたり文面のテイラリングを行い価値訴求をすることで、母集団の形成に大きな効果があります。そこで訴求時に参考にしていただきたいのは、下記の切り口や観点です。
切り口 | 具体例 | |
---|---|---|
1. | 会社のビジョン | ・会社のVision、Mission、Value ・マーケット、ポジショニング |
2. | 従業員や文化 | ・経営陣の人柄や経営陣との距離 ・会社のカルチャー ・従業員の属性や多様性 ・一緒に働くことになる同僚や上司 |
3. | 業務・ビジネス | ・獲得できる経験やスキル ・キャリアパス/役職/昇進速度 ・サービスや製品の特異性や独自性 ・裁量 ・やりがい |
4. | 待遇・制度 | ・人事制度 ・給与 ・就業環境 ・福利厚生 ・勤務日数/勤務時間 |
例として、幾つか紹介します。
例1)B2B営業経験あり、リーダークラスのAさんの場合
会社の歯車の一つにはなりたくない。
自分のスキルを活かせる環境があるはず。
Aさんのようなペルソナの場合、下記を中心に訴求すると母集団形成が上手くいきやすいです。
3.業務・ビジネス
4.待遇・制度
従って、3.については、営業手法が異なるので商材や業務内容を詳細に記載したり、4.については、昇進速度や裁量の大きさを強調して記載するとよいです。
例2)10年少々の法務部門の経験をしているBさんの場合
保育園の子供がいるので、家族の時間を重視したい。
とはいえ、一方で経験も積みたい。
Bさんのようなペルソナの場合、下記を中心に訴求すると母集団形成が上手くいきやすいです。
2.従業員や文化
4.待遇・制度
2.については、内勤になるので配属先の同僚のことや、会社のカルチャーを詳細に記載したり、4.については、ワークライフバランスが実現できる福利厚生制度などを強調して記載するとよいです。
例3)ゼネラルマネージャーのCさんの場合
子供は自立している。
給与よりかは社会や周りのメンバーのために働きたい。
Cさんのようなペルソナの場合、下記を中心に訴求すると母集団形成が上手くいきやすいです。
1.会社のビジョン
2.従業員や文化
1.については、会社の未来像や現在の事業状況を詳細に記載したり、2.については、ワークライフバランスが実現できる福利厚生制度などを強調して記載するとよいです。
求人票の例
以上の内容を踏まえて、良い例と悪い例をご紹介します。
【良くない求人票例】
タイトル | 海外支社の営業部長 |
会社概要 | 代表者:〇〇〇〇 所在地:〇〇県〇〇市 設立年:20xx年 事業内容:ITサービス事業 |
業務内容 | 弊社はクラウドサービスを運営する企業です。メインサービスの海外進出にあたり、海外支社の新規立ち上げをお任せできる営業部長を募集します。 【業務詳細】 ・戦略立案 ・新規顧客開拓 ・営業メンバーのマネジメント |
応募資格 | 【必須条件】 ・新規拠点の立上げ経験 ・営業部門のマネジメント経験 ・戦略立案から実行までの経験 ・xx業界での就業経験 ・中途採用の経験 ・ビジネスレベルの英会話力 【歓迎条件】 ・コミュニケーション能力の高い方 |
年収 | 600-1400万円 |
… | … |
どこが良くないかというと、大きくは下記の点が挙げられます。
- 会社の魅力が訴求されていない
- 経営陣の情報や、ミッションがなく、会社の目指している方向性が良く分からない
- 業務内容のイメージが沸かないため、あまりこの求人に挑戦しようと感じてもらえない
- 必須条件が少々多すぎる
- 年収幅が大きすぎる
そこで、これらの点を修正し求人票をアップデートすると、例えば下記のような感じになります。
【良い求人票例】
タイトル | 【米国支社立ち上げ/幹部候補】営業部長(3年連続で売上50%成長のスタートアップ) |
会社概要 | 代表者:〇〇〇〇 所在地:〇〇県〇〇市 設立年:20xx年 事業内容:ITサービス事業 ビジョン:クラウドで世界をつなぐ ミッション:世界のxxxxを解決し、持続可能な世界を実装する バリュー:考えることをあきらめない CEOの紹介 xx大学xx学部卒業後、xx大学大学院xxx研究科に進学。途中で会社を立ち上げ、”xxxxクラウド”を開発。リリースして3年で国内のxxxのプラットフォームのシェアNo.1を獲得した。 |
業務内容 | xxxxxをビジョンに掲げ、クラウドサービスを開発・提供する企業です。売上拡張にあたり、米国支社の新規立ち上げをお任せできる営業部長を募集します。 営業部門統括のCOO直下のポジションで、幹部候補としての採用を予定しています。 全くの更地の0の状態からの立ち上げなので、裁量をもって取り組んでいただきます。 【業務詳細】 ・戦略立案、企画提案型のコンサル営業 ・新規顧客開拓 ・ビジネスプラン策定し、売上責任を持ち詩行計画を執行する ・市場分析とホワイトスペースの発掘 ・営業メンバーの採用業務 ・営業メンバーの業務管理 |
応募資格 | 【必須条件】 ・営業部門のマネジメント経験 【歓迎条件】 ・xx業界での就業経験 ・新規拠点の立上げ経験 ・経営陣の視座を持ち、業務の執行まで行うことができる方 |
年収 | 800-1200万円(見込残業代45時間分込) ※年間一回の賞与あり ※年二回の査定 |
… | … |
良くない求人票例の修正ポイントについて、下記の通り、各項目にてフォローする形で修正・追記しました。
- タイトル:求人、会社の魅力を訴求し、数字で具体化もして明示
- 会社概要:経営陣情報やビジョン、ミッション、バリューを記載
- 業務内容:役割期待や入社後の具体的な業務内容も記載し、イメージ醸成
- 必須条件:数をある程度絞り門戸を広げる
- 年収:下限を意識しつつ提示し、賞与制度や昇給について補足説明
いかがでしょう?こちらの方がより応募してみたく感じると思いませんか?
まとめ
本記事では、求人票に記載する基本的なことから、母集団を増やすための実践的なことまで解説しました。人材の定義の具体化の所が最初は難しく感じるかもしれませんが、この部分がしっかりできるだけでも大分結果は違ってきます。今回の内容を意識して、採用活動の顔となる求人票を記載し、採用活動を円滑に進められるようになれば幸いです。
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